「ステラの服はこれだよ。」


 ネオから手渡された洋服にステラは胸を躍らせた。青と白を基調としたその洋服は背中の辺りが随分と大胆な造りになっていたがそれさえもステラに似合う感じがした。


「ステラの…?」
「あぁ、ほら当ててごらん?」


 ステラはネオの言うとおりその服を胸に当ててにっこりと微笑む。そんなステラにアウルは”すげーヒラヒラだな”とか”僕のほうがカッコいい服だ”とか言ったがステラにはそんなアウルの言葉はもはや聞こえない。


「ステラ、似合ってるよ。」







 ―――聞こえるのはネオのその言葉だけであった。












君が居るから僕が居る。     













「ちょっと、待ってっ!」
「…っ!」


 ―――ステラは逃げていた。


 此処はアーモリーワンの中にある一都市だ。今回は外での初任務の為失敗は絶対許されない。
 ステラは仲間と共に街を歩いていた。しかし途中、人とぶつかりその人物に追われていた。


(まだ、ついてくるっ…!)


 走っても走っても付いてくるその少年にステラはどうしたものか逃げながら考えていた。そもそもぶつかっただけで追ってきたりするものか。
 もしや、自分の正体がバレたのでは?
 いろいろ考えるにしろはっきりした答えは浮かばない。



「待って、誤解なんだ!」
「っ、!」


 どれだけ走っただろう。ステラはついにその少年に腕を掴まれ動きが止める。
(どうしよう…どうしよう、ネオ…。)
 今此処で騒ぎを起こすわけにはいかない。それより重要なのは何故この少年が自分を追ってきたのか、ということ。
 ステラはそっと顔を上げその少年を見てみると彼と初めて視線が交わった。黒髪、そして真っ赤な瞳が印象的な少年だった。




「あ、あの。俺、さっきの事!わざとじゃないんだ!」
「えっ…?」


 ステラは彼の言う”さっきのこと”を思い出す。
 彼とぶつかって、その拍子に彼に支えてもらい、その後知らない彼のその腕から逃げ出した。


「えっ?あの、胸…、」
「むね…?」


「俺、君の胸触っちゃった…でしょ、?」


 少年は何とも言いにくそうにそう言い、続けて”ごめんなさい”と頭を下げる。しかし当の本人のステラはというとポカンとした表情でそれをただ見つめる。


「えっと、街で何してたの?」
「まち…みてた。」
「え、あの…何を見てたの?」



 ステラは見ていた。ショウウインドー越しに映る自分の姿を。
 そこにはネオが褒めてくれた服を纏った自分がいた。ふわふわとしたスカートに気分も良くなりクルクルと回ってみた。するとスカートもふわりふわりと風に乗り動き出す。
 その一連の動作が楽しくなりステラは踊りだしたのだ。


(スカート…ネオ………、じかん…。)




「だい、じょうぶ。…ステラ、いかなきゃ。」


 ステラはそのまま走り出す。結局彼の言いたかったことはステラには理解できなかったのだが今はそれ所ではない。
 せっかくの初任務、ネオの期待に答えたい。


(はやく、いかなきゃ。)












 一方その場に残された少年はというと掌をぼーっと眺め考えていた。


(大丈夫、ってことは気がついてなかった、って事か?)
 少年もまたステラの言った言葉の意味を理解できずに困っていた。しかし知らない女の子の胸を触るなんで男として最低な行為。そうだとしても”大丈夫”の意味合いがやはり違う気がしたがひとまず謝れた、ということで無理やり自己完結することにした。




「”ステラ”…か。」




 少年もまた少女とは反対の方向へ走り出した。





















END



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ステラ祭り第六段。
デス種第一話捏造です。(にっこり)

お互いを知らない状態での出会い、みたいなね。そういうの大好きです!(ベタな女!)


っていうかステラたん可愛い(´∀`)


2006/2/10