ぽたぽた、と何かが顔を目掛けて落ちてくる。
雨?それともまだ誰かが泣いてるの?
だけどもう己の瞳は開かない。
死んだの?誰が?自分が?
まるでふわふわと宙を浮いているような、そんな感覚。
傍で聞こえるのは、いつも聞いていたあの子の声。
「シン……すき。」
赤色のリズム。
自分が死ぬ瞬間というものはどういう感覚なのだろう。戦いに出る者は死ぬ事など考えてはいけない、と昔誰かに言われた気がした。
戦うということは実践に出てみなければきっと理解できない事だと思う。いくら練習で成績がよくても実践で死んでしまえば意味がない。戦いの出れば出るほど自分が”生きていること”が何より簡単な事で、何より難しい事だと言うことが理解できた。
「こわいっ、、しにたくない!!」
ステラはそう言った。今思えばステラがいなくなって理解できた事もたくさんあった。
冷たくなった体、開かない瞳。まるで眠っているかのように死んでいった。
記憶はもっと戻る。オーブだ。脳裏に広がるオーブは実に懐かしく、とても平和だった。普通に学校へ行ったり、家族でピクニックへ行ったり。
家族も仲良く、両親は近所でも有名なおしどり家族だった。「お兄ちゃん」と優しく呼ぶのは愛しの妹。小さくてとても可愛いくて、誰よりも優しい。そんな妹だった。
しかしそんなオーブが壊れたのも一瞬だった。
吹っ飛んだ土地に横たわるいくつもの遺体。シンの家族も例外ではない。家族の悲惨な姿にそのくらい涙したかは分からない。
「父さん、母さん。マユ…。」
大切なものはいっきになくなった。
「シン?ねぇ、シンってば?」
誰かがまた自分を呼んだ。振り向けばそこはミネルバでの光景だった。レイにヴィーノにヨウラン。そしてシンを呼ぶのはルナマリアであった。
最近までのシンの日常。シンはみんなのもとへ駆け寄りルナマリアに抱きつく。
「よかった、ルナ!無事なんだな!」
「……何言ってるの、シン。」
「え…?」
「メイリンを殺したくせに。」
声が出ない。ルナマリアはシンの腕から離れるとシンを睨み付ける。それはシンがよく知ってる憎しみの顔。
(ルナをこんな風にしてしまったのは……俺だ。)
そう思っても何も言葉が出ない。メイリンを撃ってしまったのは紛れもない自分なのだから。
「ルナ…ごめ、…っ!?」
―――どくん。
いきなりシンの心臓に鈍い痛みが走り、彼はその場に屈みこんだ。
”痛い、痛いよ”
”苦しいよ”
”こわい”
”助けて”
『シンの人殺しっ!』
まるで誰かの嘆きのような声が頭に響き、その苦痛からシンは目を閉じた。
「…ん。」
どのくらいそうしていただろう。
そっと目を開くとそこは見慣れたモピルスーツ、デスティニーのコックピットの中に座っている状態でいた。
断片的にシンの頭に思い出される本物の記憶。
(確か…オーブと連合の戦闘に出て…。)
そう、彼は戦闘に出ていた。そこで出会ったのだ、あの機体に。
「あいつ、……ッ」
追わなければ、そう思って操縦しようと体勢を持ち直そうとするも何故か力が入らない。それどころか鈍い痛みが腹部に走り、その箇所を手で擦ってみると独特のあの感触が体全体に広がる。
”まさか”
心臓がやけにドクンドクンと心拍数が高くなる。そして視界を腹部に映すと下半身全体がもはや血の海。
(なんだこれ、なんだよ。)
―――ただひとつ。思い出すのはあの言葉。
『シンの、”あした”……ちょうだい?』
流れるリズムが、ズレ始めた瞬間。
END
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ステラ祭り第四弾です!!(これステラか?笑)
なんていうか、あたしステラ好きだけどシンはやっぱりあんまり好きじゃないみたいですね!(全体的にこんなレベルだ。)というか湖に沈めたの今も恨んでるYO。(笑)
イメージ的に此処で言うリズムは心拍音です。もっとグロ系書きたい。
BGM 安藤裕子「リズム」 自分的にシンソング。
2006/2/8