「スティングってさー、ステラのことどう思ってるわけ?」


 アウルのいきなりの質問にスティングは口に含んだコーヒーを思わず噴出しそうになった。
 そんなスティングを見てにやりと怪しい笑みを浮かべるアウル。


「な、なんだ、いきなり!!」
「べっつにー。どうなのかなって思っただけー。で、どうなの?」
「どうもなにも…ステラはステラだ。」


 そう言い切ったスティングの様子に何故かほっと胸を撫で下ろす自分がいた。







水色の調べ。     








「今日は西へ移動だ。そこにはまだザフトもいないそうだが、一応三人とも部屋で待機しておくように。」
「了解っ!」


 誰よりも元気よく返事をしたのはアウルだった。その瞳は”今日は一日好きに遊べる”と輝いているようにスティングには見え、小さくため息をつく。アウルがこんなにウキウキしている時に限って彼にはあまり良くない事が起こるのだ。
 (確か一昨日も…夕方までバスケしてたよな…。)
 最近休暇が多いように思う。その度にアウルはスティングをバスケに誘っていた。
 そしてスティングのその予想は見事にビンゴする。


「スティング!バスケしに行こうぜ!」















***







「きもちいー!」


 外へ出ると程好く海風が吹いていた。季節は太陽がサンサンと輝く常夏。アウルはその暑さから上着を脱ぎ捨てた。続いてスティングも上着を脱ぐ。
 ふと目をやるとステラも二人に続いて上着を脱ぎ適当な場所に座っている。


「ステラも来たのかよ。めずらしー。」
「たまにはいいだろ。ステラはいつも一人だし。」
「へー。スティングが誘ったんだ?やっさしー。」
「ま、まあな。」


 そこで照れる彼の様子をアウルは見過ごさなかった。
 ステラはいつも一人でいた。何を考えているのか、こっちの話を理解しているのか、彼女の全てがほぼ謎だった。いつも二人でバスケをするときも「いい」といって部屋へ戻ってしまう。
 思い起こせば一度だけ三人でバスケをしたことがあった。その時もスティングがステラをサポートして…といった感じだった。


「ステラってさ、スティングの言うこと聞くよな。僕の言うことなんて聞かないのに!」
「そんな事はないだろ。」
「ある!」


 そう云うとアウルはスティングにボールを投げ捨てステラの元へ向かう。
 (なんか…ムカツク!)
 ステラはというと相変わらず海を眺めながら黄昏ている。


「ステラ!」
「…アウル?」
「なーにしてんの?」

 アウルはステラの隣にあぐらをかいて座り彼女を見る。ステラは相変わらず海を見ていたがじっと自分を見つめるアウルの存在に気がつき、アウルをじっと見つめ返す。


「うみ。」
「何でステラは海がすきなの?」
「?」


 アウルのそんな質問にステラは首を傾げ「わからない」と答える。それを聞いたアウルも何故自分がこんな質問をステラにしてしまったのか分からず小さくため息をついた。


「アウル…?」


 そっとステラはアウルの髪の毛を撫でる。と、同時にアウルの頬は一気に熱くなり思わずステラのその手を掴む。
 しかし「いたい…。」というステラの声を聞いて慌ててその手を離した。


「あ、ごめんっ…てか!!びっくりしただけだっつーの!」


 まさに一瞬の出来事。アウルは心の中で「落ち着け」と何度も繰り返しそっと深呼吸を繰り返す。
 ステラはというとそんなアウルの様子をきょとんとした様子で見つめている。


「あのね、ネオが…。ステラにしてくれたの。」
「ネオが?」
「げんきになるって!」


 にっこりと微笑みつつそう言い切るステラの表情は今までに見たこともない程の笑顔だった。そんなステラの様子を見てアウルは複雑な心境になる。
 思えばいつもそうだ。ステラはネオが関わると人が変わるかのようににっこりと笑い、ネオしか見えなくなる。


「ステラは……ネオがすきなわけ?」

「うん!ネオ、すき!」


 そっと聞いた彼の質問に彼女は残酷な程の笑顔で答える。それはアウルにとっては後頭部を思いっきり殴られたぐらいの衝撃であった。


 (なんでこんなにショックなんだ?)



 そんなアウルを尻目にステラは立ち上がり上着を拾い上げる。その瞬間、もう一度アウルはステラの手を先ほどより優しく掴む。


「……何処いくんだよ。」


 本当に聞きたいことはこんなことじゃないって分かっているのにそれ以外の台詞は思い浮かばない。


”ボクノコトハドウオモッテルノ?”


 そしてその気持ちを認めたくない自分がいた。


「ネオのとこ。」
「あ、っそ。」


 離した手の平からはステラの温度がだんだんと消えてゆく。こんなことらしくないなんて自分が一番分かっていることだ。ここには何もないのだ。昨日も明日も、これからも。
 ”それなのに?”


「なんで、こんなに気になるんだ……?」


 それはまだ認めたくない気持ち。


 ―――アウルはそれを自分の中で探し始めた。








END



********************************


ステラ祭り第三弾です!!(´∀`)今回はアウステ風味にしてみました(笑)
アウルはすきなこには意地悪したくなるようなタイプだと思ってますがたまには可愛いアウルが書きたいなと思い書いてみました。
なんというかアウルも含めてのステラ関係の意識調査!みたいな感じです。
きっとスティングには全部分かっててこの二人の様子も後ろで笑ってみてるんだと思います!!(そんなポジ希望!)


2006/2/7