この夢が終わったら、きっとわたしは貴方にあえる。

 戦争が終わったら、きっと僕は君にあえる。



 まだ綺麗な自分達はそう信じて止まなかった。



平凡な習慣と、習慣の平凡。    



「…。」

 ステラはその日もいつものようにスティングとアウルと共にミーティングルームにて戦闘待機を命じられていた。
 この時間はいつも苦手だ。なぜならこの後向かうのは戦場なのだから。

 ステラは普段無口だ。いや、無口というよりは彼女には最低限の会話以外、つまりは談笑というものが必要ないだけなのかもしれないが。
 しかしそんな彼女でもこの時間の静寂は頭が痛くなるほど苦しい。
 この時間、いつも考える事は同じで。


(コワイ。しんじゃう…は、だめ。)

 そう思うと体がブルブルと震えてきて。考えれば考える程に恐怖が込み上げる。


「こ、わい…。」

 呟いた言葉に誰も反応を示さない。
 優しい言葉をかけてくれるあの人は、今日はここにはいない。

 涙を目いっぱいに溜めてスティングとアウルを見るが今日の二人は声すら掛けてくれる気配がない。
 どうしようもなくなってステラは目を綴じて大好きなあの人を思い浮かべる。


『大丈夫だよ。ステラは死なない。僕が守るから。』

 そう柔らかく笑う彼を思い出すと自然に胸がぽかぽかした。



(まもる、…、しなない。)

 これは二人だけしか知らない魔法の呪文。これを繰り返すことでステラは恐怖を和らげていた。
 繰り返せば繰り返すほどに不思議と胸がぽかぽかする。そんな魔法の呪文。


「よし、時間だな。」


 静かな部屋にスティングの声が響いた。もうそろそろブリッジへ向かう時間らしい。
 見ればアウルは思い切り背伸びをしている。どうやら居眠りをしていたようだ。


「よく戦闘前に寝れるな。」
「ばーか、寝てたんじゃねーよ!精神統一ってやつ?」
「同じだよ!」


 スティングはアウルの髪の毛をわしゃわしゃと撫で回すとアウルは頬を膨らませ「子ども扱いするな!」と反論する。
 そんな二人を遠くでただ見つめるステラの瞳にはもはや二人の姿はない。もっと遠く、ステラはシンとであったあの日からもはや彼以外何も見えていない。
 ”忘れたくない”
 そんなステラの強い想いからか、どんなにゆりかごで記憶を消されても自然と思い出すシンの姿。いつ、どこで、そんな出会いをしたかは覚えていない。そんなことはステラには重要ではないのだ。必要なのは自分を守ってくれると言った彼の言葉だけ。




(ステラ…しにたくない・・・。)


 彼女にはその一心しかなかった。










***




 着せられたパイロットスーツを身を纏い与えられた殺人兵器に乗せられる。これはこの三人の日常。毎日、誰かを殺し、毎日誰かが死ぬ。
 ”戦いたくない”そういえばどうなるだろうか。
 考えるまでもない結果が頭を過ぎる。平和を願うことすら三人にはもはや許されない事なのだ。


「ステラ、聞こえるか?」


 突如回線にてスティングの声が聞こえる。ステラは慌てて通信を開きそれに返す。


「スティング?きこえる…。」
「東の方からザフトがやってきた。此処はアウルに任せて俺とステラで応援に向かう。いいな?ついて来い。」


 今は戦闘中。反連合地域を制圧すべく地域全体を鎮圧するのが今回ファントムペインに与えられた使命であった。
 最近この辺りでは”ミネルバ”との戦線報告もよく耳にしていた。わざわざファントムペインを向かわせたのはそれも予想してのことだろう。


「うん。」



 東へ向かえばミネルバからあの忌々しいインパルスなこちらへ向かってきた。
 敵、敵、敵。
 殺さなければ、殺される。そんなソレが今こちらへ向かっている。


「いやあぁぁぁぁぁぁ!!」
「待て、ステラ!」


 もはやスティングの言葉すら聞こえない。何も聞こえない。聞こえるのは自分の心拍音。
 ”イキテル、マダイキテル”
 周りが回る。飛んでくるビームを弾き、尽かさずビームを返す。


「沈めーっ!はぁぁぁあああ!!」
「ステラっ!くそっ!」


 ステラの乗ったガイアはインパルスに立ち向かってゆく。そうこうしているうちにスティングの周りにも何機かザフトのMSが立ち向かいステラの傍に行くことを邪魔する。



(応援はまだか…二機では太刀打ちが精一杯だっ。)






 ピーピー…と電子音が響く。ネオからの通信だ。


『こっちが思ったよりやられた。いったん引くぞ。二人とも戻ってこい。』


「ちっ、了解。ステラ引くぞ!」
「いやっ!アイツ…っ!アイツを落とす!」
「駄目だ、ステラ!!」


なんとか周りのMSを振り払ってガイアのもとへと駆け寄る。しかし構わずソレに立ち向かってゆくステラにスティングは思わずブロックワードを使う。





「ステラ、引かなければ死ぬぞっ!」






















 ―――異常に死をおびえる女の子がいた。


 ”守る”
 衰弱しきった彼女の命を救うにはもといた場所に返す以外今の自分には出来なかった。それは”守る”事になるのだろうか。


 ”戦争がない、温かくて平和な場所へ”
 そんな場所はこの世界のどこかに存在するのだろうか。


「ステラ、君は今頃どこにいるんだろうか。」









 二人の距離が近くて、遠いことを知らないのは当人達だけ。











END



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書きかけ放置第一弾です。コレ実は書き始めたの8月です(´∀`)
多分友達ん家で書いたモノみたいですね。何気に初?シンステ風味です。
最近シンがステラ奪って二人で平和に、とかも考えなくもないです(笑)

2006/2/5