死なないで。
 僕は貴方を守りたい。






                       おかあさん




 優しいひとがいた。
 大好きなひとがいた。


「アウルくん、調子はどう?」
「へーき!」

 その人は白衣を着た研究所の一員。
 だけど、他の研究員とは違ってとても優しかった。

 研究所の施設では辛いことばかりだったけど、あの人の笑顔でそれも全て吹き飛ぶような感じがした。

 眠る前に頭をぽんぽんと撫でてくれて、子守歌も歌ってくれた。


 ――それはまるで"おかあさん"のようで。





「かあさん、って呼んでいい?」
「うん、いいわよ。」


 血の繋がっていないかあさんと僕だけど、僕には本当のかあさんだった。






 別れの日。
 それは案外、早くやってきた。

 僕はその戦闘能力から施設を出ることになった。
 かあさんのために、かあさんを守るために手に入れた力なのに。


「僕、かあさんと離れたくないよ…!」
「アウル…。」


 泣きじゃくるアウルを抱きしめ、その人も小さく呟いた。


「私も…貴方を離したくない。だけど出来ないから…。アウル、どんなことがあっても生きて。お願い。」
「かあ、さん。」


 そういってかあさんは自分の首飾りを僕の首にかけてくれた。


「お守り。かあさんはずっとアウルを見てるから…。約束。」


 それは最初で最後の約束だった。
 生きてさえいれば、また施設にだって顔を出すことが出来て、またかあさんに会える。




 だから、そのために。
 全てはかあさんのため。





 だけど、それは最悪の形でアウルの耳に届く。


「アウル、スティング…。」
「ステラ?」
「ラボ、しょぶんしっぱい…ザフト、だめ。ネオが、いってた。」
「え?」


 ――ラボの処分?失敗?ザフト?

 一気にいろいろな事が頭の中に渦巻き始め、体がくらくらする。
だけど、叫ばずにはいられない。
 だって、そこには大切なかあさんが。


「かぁさんが、しんじゃうじゃないかぁぁぁああ!」















 次に目が覚めた時はゆりかごにいた。


「あれ?」

 
 ゆりかごに入るまでの記憶がない。
 いつもならそのくらいの記憶なら残っているのに。


「アウル、いくぞ!」
「あ、待って!スティング!」




 ――あれ?

 まただ。何か違う。
 何か足りない。


「大切な事、忘れてる気がする。」




 大切なひとがいました。
 大好きなひとがいました。

 だけど今はもういない。
 それが誰だったのかすら思い出せないのだから。







end




***

はい、アウルです。
や、言い訳させてください!本当はステラも出すはずだったんですよ!なのに出せなかったんです!(言い訳になってない;)
アウルは結構好きですねvvと、いうかアウステが結構好きだったりするんですよ!
またかきたいな☆

アウルのブロックワードの「かあさん」
みんなかわいそうな過去があるんだろうな、と思いながら書きました。
…今度はステラたん書きたいなvv(結局ソコかーー!!笑)


2005/04/26